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「そう言えば佐野先輩は芳川ちゃんもいるっていってたのに、
芳川ちゃんいなかったなあ…」
両親が家にいない為に、
だれもいない家に着いた私は、
そんなことを考えながらお風呂掃除をして濡れた足を拭いて、ラフなTシャツに着替えていた。
私の両親はどちらも世界中で活躍している医者だった。
二人とも遠くの国にいって沢山の人に頼りにされていて、
年に1度しか帰ってこなかった。
帰ってきたその日も二人の疲れた顔が心配で、
遊びたかったけどゆっくり休んでもらった。
二人とも私の将来を頼りにして、
私一人を置いていった。
私も小さいときからそんな二人に憧れて、
人の体の本を沢山読んでたくさん勉強をした。
ただ私は最近になってそのどれもこれもが私の性格上、
憧れじゃなくて私がただただ二人に頼られて安心したいがために、
寂しくならないためにしていることに気が付いて、
そんな私のエゴの為に人助けをするなんてことが浅ましく思えて、
嫌気がさした。
「あ、自己嫌悪しちゃった。
やっぱり私はダメだなあ…」
私はやっぱり人に頼られていないとダメになってしまうのだった。
お風呂場の水の音しか聞こえない家で、
私はこんな些細なことを皮切りに、
「なんで私はこんなにネガティブなのか」、
「どうしてここまで恥ずかしいほど寂しがりやなのか」と、
ありもしない心配で自分の足元をぐずぐずと自分で崩してしまっていた。
明日学校に行くまでこんな呪いみたいな自己嫌悪が私にまとわりつくと考えるだけで怖くて、
明日になったら私なんてなにもかにも、
居場所すら消えているんじゃないかという杞憂が本当みたいに私を嘲笑ってくる。
そんな感情が、
学校に行くまでの苦しみが毎日毎日毎日毎日私にまとわりついてくるのだった。
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