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蜘蛛は見る間に弱っていき、その体をミイラのようにしおらせて息絶えた。
「……ひでえ」
「………ゴフッ………お前が死んだかもしれんのだ……………ゴフッ………幸運と捉えれば良いじゃろ………」
「………そうすな」
そしておれは神の力、そして命を垣間見、彼とその場を後にするのだった。
「何を普通に行こうとしている」
「やっぱだめ?」
「…………ゴフッ………誰じゃ……ゴフッ」
すぐ後ろにあの長剣。
いやー、人生そんなに上手くはいかないかー。
「ご老体。そこをどけ」
「……小娘………失せろ…………」
「ッ!!」
疫病神の一言で、兵士は勢いよくさがった。
うん、まあ、曲がりなりにも神ですしね。
辺りの空気が凍りつく中、疫病神はおれを連れて門へと歩いていった。
***
彼女の長剣の先には、しおれた老人がいた。
背に先ほどの青年を庇うようにして立ち、彼女を見ている。
「……小娘………失せろ…………」
たったそれだけで、彼女は"死"を直感した。
身体は勝手に退き、老人の、少し窪んだ暗い瞳から目が離せなくなっていた。
そうして2人が門をくぐるのを遠巻きに見ることしかできず、彼女は恐怖と惨めさから震えていた。
***
「なあなあ。名前は?」
「……ゴフッ ………改めて聞かれると…………少し……ゴフッ………寂しいものがあるのう………」
いや、なんせ記憶喪失(他称)なもんでして。
「……ゴフッ………儂の字は……テタルト……じゃ………ゴフッ」
テタルト………聞き覚えがあるのは、きっとタルトが入っているからだろう。
具合の悪い爺さんとそんなに喋ることもなく、行き着いたのは"GILD"と看板を掲げた木造建築だった。
「ギルド?」
「……職安じゃ………ゴフッ………」
じじい、なんで職安知ってんだ。
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