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「そうかもね、ごめんだけどちょっと見てきてくれないかなあ。気になるなー」 「おーけー、任しときー」  私はにこやかに胸を張って病室を出る。  何も彼女は自らおもむくことが億劫だから私を使い走りにしているわけではない。  能瀬みこと(のせ――)は重病人なのだ。  あの白く細い腕からのびたチューブが私には彼女をいましめる鎖に見えた。  正直、私には難しい話はわからない。お医者さんはみことの両親に詳しい説明をしているのだろうけど、みこと自身はとくに興味もなさげに話を聞こうともしなかった。  だから私はまだみことがどんな病気をわずらってここで療養しているのかを知らない。  お医者さんから話を聞いても理解できるとは思わないし、私が説明されても治す力がない以上、話をするのもされるのも互いにとって時間のムダなのだ。  お医者さんから深刻そうな顔をされて説明を受けるより、みことの弱々しいながらも前向きな笑顔を目にしていたほうがいいに決まっている。  だから私は今日もここに来たのだ。  そうだ、毎日ここに通っている。  みことは私の大切な人だったから。
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