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03
あんまり褒められた行為じゃないのはわかっている。
だけど私はこの手に煮干しを握りしめていた。
煮干しは私たち人間からしてもおいしい食材だけど、ネコの好物としても有名だった。とりあえず私はあのネコを餌付けすることにしたのだ。
よい子はマネしちゃだめだよ。私はわるい子なので気にしないだけでさ。
ただ、みことの笑顔をいっぱい見たいってだけの自分勝手な理由だ。
最寄のコンビニまで走って、急いで戻ってきたかいもあって、ネコはまだ森の入り口に佇んでいた。
私は療養所を振りかえる。白壁にはまる窓に向け手を振った。ゆったりと振りかえされた。
よし、とネコと相対する。
正直なところネコはあまり得意じゃない。何を考えているかわからないし。いや、わかったらすごいんだけど。とにかく、なんか傍若無人な感じがいやだ。
そんなわけでおっかなびっくり慎重に近づく、ネコはこちらを見るがとくに警戒しているようすもなく、私はそうっと煮干しをつまんで差し出しながらさらに距離を詰める。
ほら、もうこれだよ。ぜんぜん逃げやしない。
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