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白かったはずの壁紙は真っ赤に染め上げられ、小さな肉の欠片がくっついている。
床には三つの死体があった。
一つは父さんだろうか、腹部を引き裂かれ、苦悶の表情を浮かべたまま事切れている。
その隣の小柄な死体は妹だろう、体は原型を留めておらず、その手に握られていた携帯を見て妹だと判断できた。
ただ母さんだけは胸に包丁を突きたてた状態で横たわっている。
自殺だろうか。
「う…うえぇ」
俺は、その光景と、鼻につく血の臭い、そして家族が死んだという現実を思い知らされて、吐いた。
涙も零れ落ち、床には吐瀉物と血とほんの少量の涙が混ざった液体が出来上がる。
俺はその液体を見ながら呆然とそこに立っていた。
いや、液体を見ていたわけではない、死体から目を背けていたのだ。
家族の死体なんて見たくはない、しかし、俺が見なければ誰が家族の死を伝えるというのだろうか。
俺はその有様を目に焼き付け、家から飛び出す。
そして、公民館へと無我夢中で走った。
気がつくと俺は布団にくるまって寝ていた、窓の外から朝日が差し込んでいる。
起きて辺りを見ると、十人くらいの人がいる。
俺は窓の外を見て、焼け野原になった村の跡地を見て、再び布団に潜り込み意識を手放した。
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