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「あまり亡くなった人間のことは考えないほうがいいよ。彼の任務が成功する確率は半々だった。仮にそうなっていれば、タツオのほうがこの世にいなくて、みんなから偲(しの)ばれていただろうとぼくは思う。遠く安全な場所から狙撃をしてきたのは、浦上くんのほうだ」  その通りなのだが、タツオには正論は救いにならなかった。 「ぼくは進駐官には向いていないのかもしれない。人が死ぬと、ひどくこたえるんだ。自分が死ぬのは、まだいい。でも、ぼくの作戦ミスで部下が死ぬとか、ぼくを守るために誰かが死ぬとか、そういうことには耐えられそうもない」  模擬戦の決勝で自分の盾(たて)になって亡くなった五十嵐(いがらし)と潜んでいた護衛によって銃殺された浦上のことを考えた。ふたりとも15歳という若さで散っていったのだ。
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