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「もしかしたら、ぼくは厄病神(やくびょうがみ)なのかもしれない。進駐官養成高校1年で、もう周囲にふたりの死人を出した。どこまで広がるか想像もつかないよ。もしかしたら、ジョージも……」
その先は口にできなかった。風鈴が澄(す)んだ音を立てた。
「ぼくのことなら心配はいらない。きみが思っているより、ずっとしぶといからね」
タツオは夏がけをはねのけて、上半身を起こした。
「だけど、うちの3組1班はもう何度も襲撃を受けているだろ。テルは逆島(さかしま)家再興を目指す暁島会(ぎょうとうかい)だから、まだ納得してるのかもしれないが、クニとジョージは違うだろ。ただの巻きこまれ損じゃないか」
ジョージも起きあがった。布団の上であぐらをかく。細いすねが真っ直ぐできれいだった。西洋人の足だ。
「安全志向のクニは確かに損かもしれないが、ぼくは違うよ。タツオだけでなく、カザンのほうとも関係を続けているし、進駐官としての将来を見据えて、きちんと手は打っている。タツオもぼくを単純に信用しないほうがいい」
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