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これまで何度も危機をともに乗り越えてきた友人だった。名門の出身だが、おたがいに父を亡くして没落したという共通点もある。タツオは口には出さないが、ジョージを養成高校でただひとりの親友だと思っていた。
「将来か……ぼくにほんとうに進駐官としての未来なんてあるのかな」
タツオの声はかすれて、ほとんど聞きとれないほどだった。ジョージが暗がりのなかタツオの目を見つめてくる。
「未来は定まったものでも、フルコースの料理みたいに誰かが差しだしてくれるものでもない。未来があるかないかは、これからのぼくたちの働きによって決まるんだ。五東連合だって完璧に進駐軍のすべてを握った訳じゃない。あきらめるなんて、タツオらしくない」
タツオは心のなかで反対を叫んでいた。自分はそんなに立派な人間ではない。進駐官になるのも嫌々周囲に流された結果だ。
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