第1章  

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私は30分前に起きてシャワーを浴び、 着替えてメイクをし始めたが、直樹はいっこうに起きない。 それで仕方なく起こしたのだ。 「んじゃ、帰るわ。タオルありがと。洗濯機の上に置いといた」 ワイシャツの胸元のボタンも開けたまま、 丸めたネクタイをポケットに突っこんで、 彼は玄関に向かった。 私はリビングでチークブラシを片手に、 「じゃ、またねー」 と手を振った。 ガタンとドアの閉まる音がした。 直樹の部屋は同じマンションの2階にある。 あんな格好でも誰にも会うことなく部屋まで帰れるだろう。 朝帰り…にしては色気も何もない。 私と直樹は中学からの付き合いで家も隣同士、 同じ高校、大学で…さすがに同じ会社となるとぞっとしたが、 結果28才だから15年くらいの付き合いになる。 そのせいで男と女という意識はおよそ皆無で身内にも似た関係になっていた。 2年以上会ってない3つ年上の既婚の兄よりもある意味家族っぽい。
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