第1章  

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女子力アップ用に伊知子が選んでくれたブラウスを着た月曜日。 私の担当の新商品販促企画プレゼンのため 必死で作った会議資料を運んでいると 廊下で直樹に出会った。 「持つよ」 直樹は私が抱えていたコピーの束を 両手で受け取って抱え、並んで歩きながら、 「販売促進会議何時だったっけ?」 と訊いた。 「10:30だったよ。3階第2会議室。あんたも出るの?」 「今回営業責任者は高宮課長だから」 「ラッキー。よかったぁ。うれしい」 エレベーターで二人だけだったから私もつい本音が出る。 「うれしいって。そこまで露骨に喜ぶ?」 「だって前回、中里課長でなかなかコンセプト伝わらなくて苦労したから。高宮課長ならわかってもらえそうだし。実績あげてくれるからこっちも頑張る甲斐あるし」   「その陰には俺という存在があるんだけどねぇ」 「そうだったっけ?」 私が茶化して笑うと、直樹は不満そうに片眉を上げた。 資料を会議室まで運んで、私たちはそれぞれの部署に戻る。 「後でな。お手並み拝見だ」 背の高い直樹が男の割に繊細な長い指で私の頭を撫でて去っていく。 背中を見送りながら、上から目線の言い方にちょっとムカついたが、 担当が高宮課長だから許してやると心で呟いた。 私は輸入雑貨を取り扱う商社の販売促進室で働いている。 商品のプロモーションが主な仕事でどう売り出すか提案し、 営業と戦略を立てる。 それだけに営業との連携は大切。 今回は北欧デザインの冬のあったかアイテムだから 私の班の得意分野でプレゼンも自信があった。 「いいプレゼンでしたね。これならイケそうだ」 会議後、資料の片づけをしていると高宮課長が声を掛けてくれた。 33歳だって聞いたけどその甘く整った笑顔の爽やかなこと。 やっぱり社内人気ランキングのダントツ1位だよね。 しかもわたし好みの低音ボイスがたまらない。 「ありがとうございます。これから細かく詰めていきますが、よろしくお願いします」 応えながらも頬が赤くなって、顔も緩んでしまう。 「美作さんの企画、僕は好きだな。感性とか気の使い方とか」 銀縁眼鏡越しの茶色がかった瞳に見つめられて、心臓が跳ねた。 「そ、そんな。でもそう言って頂けると私もやりがいあります」
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