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 レイは自分が人間であったらよかったのにと、生まれてはじめて思いました。  自分なら女の子の悲しむ理由がなんとなくわかる気がしたのです。  でも、自分はうさぎだから、ことばが通じないこともわかっていました。  あの子に手をさしのべられると思ったのに、さしのべた手はさらなる困惑のもとにしかならないとレイは思うのです。  自分がそばでなにかを話しても、あの子を混乱させるだけだ。  レイはいま、自分のなかにあるものが悲しみなのだと気づきました。  そして、人びとが毎日毎日、あんなにたくさんの悲しみの涙を流していることを思って、もっと悲しくなりました。
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