chapter.0

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着信音はかなり長かったので どうやらイタズラ電話では無いらしい。 利一は少し考えてから電話に出る事にした。 「も、もしもし?」 「あ、もしもし、利一?」 受話器から 知らない男の声が流れた。 しかし、 相手は利一の名前を的確に当てている。 どうやら間違え電話でも 呪いでも無いらしい。 そうと分かった 利一には少し余裕が出てきた。 少しノンビリした声で返す。 「あ~、そうだよ。 で、そちらさんは?」 「覚えてない? 僕だよ、猪名川[いながわ]だよ」 「猪名川…?」 利一は記憶を辿る。 それは小学生の頃まで及んだ。 そして利一は、 彼の顔など諸々の事を思い出した。 「あ、忘れちゃった?」 「あ~、思い出したよ。猪名川だろ? ドッチボールでオレの顔面に ボールをぶつけて おまけに鼻血出させてくれた奴」 「う… ま、まぁそうだね…」 猪名川は 少し詰まりながら返答した。 どうやら彼も その時の事は覚えていたらしい。 利一は小学校での記憶を思い返す。 猪名川 晋[いながわ すすむ] 通話相手のフルネームだ。 彼とは小学生の頃、友達だった。
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