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着信音はかなり長かったので
どうやらイタズラ電話では無いらしい。
利一は少し考えてから電話に出る事にした。
「も、もしもし?」
「あ、もしもし、利一?」
受話器から
知らない男の声が流れた。
しかし、
相手は利一の名前を的確に当てている。
どうやら間違え電話でも
呪いでも無いらしい。
そうと分かった
利一には少し余裕が出てきた。
少しノンビリした声で返す。
「あ~、そうだよ。
で、そちらさんは?」
「覚えてない?
僕だよ、猪名川[いながわ]だよ」
「猪名川…?」
利一は記憶を辿る。
それは小学生の頃まで及んだ。
そして利一は、
彼の顔など諸々の事を思い出した。
「あ、忘れちゃった?」
「あ~、思い出したよ。猪名川だろ?
ドッチボールでオレの顔面に
ボールをぶつけて
おまけに鼻血出させてくれた奴」
「う…
ま、まぁそうだね…」
猪名川は
少し詰まりながら返答した。
どうやら彼も
その時の事は覚えていたらしい。
利一は小学校での記憶を思い返す。
猪名川 晋[いながわ すすむ]
通話相手のフルネームだ。
彼とは小学生の頃、友達だった。
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