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『恋』。
千尋くんは先程、そう言いましたっけ。
私はこう、恋や愛といった、所謂恋愛といったものは、ひとえに都市伝説か何かかと思っていたのだ。
十六になるまでさほど世界を知らなかった私だから、かもしれないけれど。
仕方がない、五つのときから十六まで、一つの建物に籠りきりだったのだから。
男性にしか会わなかったし、そもそも『恋愛』という単語自体を知らなかった。
十六のときに初めて、沢山の純真無垢な方々と出会い、沢山の言葉を知ったのだから。
恋愛だなんて――そんなもの。
する暇も、環境も、それどころか言葉さえも。
なく、知らなかった。
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