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ゴッ――
大きな音を聞いて、恐る恐る目を開けた真斗の前には、つま先があった。
隣の女性のものだった。
台の上からゾンビを蹴り倒したようだ。
170㎝程で20歳くらいの彼女が、台から降りると、
セミロングの黒髪が揺れた。
「大丈夫?」と微笑みながら言う彼女が可愛くて、
真斗は一瞬ドキッとする。
彼女は、その綺麗な容姿に相反した強い瞳で、死んだ中年の男を見ている。
真斗は床に飛び散っている血液だけでも怖かったので、男の死体を直視できなかった。
状況を全く理解できない真斗が震えた口を開くと、
彼女が先に声を出した。
「ここは…どこ?…何も思い出せない…」
彼女も記憶がないようだった。
しかし、その表情からはあまり恐怖や不安は感じられなかった。
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