250人が本棚に入れています
本棚に追加
/308ページ
ゆっくりとその姿は闇夜に浮かび上がった。
ゆったりとした足取りで、夏風に漆黒の短髪を遊ばせながら、一人の男が階段をのんびりと上っていた。
公園にある青白い蛍光灯。
冷たくその光を放つ背の高い街灯は、夜に包まれた丘の上公園を照らし出していた。
カチッと音がして、蛍光灯の下にたどり着いた闇に溶けそうな程黒づくめの男の顔が、オレンジにぼんやり照らし出される。
一瞬白い煙が顔面を霞め、風に流れて消えた。
夜の空気に、KOOLの匂いが舞った。
約束の時間は午後10時半。
芝生の真ん中に無機質に建つ時計は、沈黙を守ったまま10時15分を指している。
最初のコメントを投稿しよう!