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と言っても、実は一度も入ったことがない。ファミリーで行くのは焼肉に決まっていた。
友達とそんな所には行かなかった。
一人では入りにくい。こういう場合、入って待っていていいのかも分からなかった。
しかしまだ40分もある。それに外で待つとなると、顔は知らず、母親がくるとは思うが相手の性別さえ実は定かではないので、
目星をつけて誰何するのは難しい。
店員に待ち合わせである旨を告げて席に着いた。
コーヒーを頼むと、メニューを指してドリンクバーになっていますと言う。
そんなシステムは知らなかった。食い物とセットにすると得らしい。
時間はまだある、大丈夫だろうとスパゲティーを頼んだ。
ところが、早そうなのを選んだつもりだったのに、待てど暮らせど持ってこない。20分ほどしてようやく出てきた。
急がねば。
一生懸命に食らいついていると、「待ち合わせ」という女の声が耳に入ったので、びっくりしてレジの方を見ると、
ショートヘアーの、白いスーツの女の人が店員と話していた。
スカートはミニ、ハイヒールのかかとは透明である。
これは違う、とホッとして、またスパをバキュームしていると、ハイヒールの爪先が視界に入ってきた。
上のほうで、「ありがとう」という声がする。
あわてて、ミンチを搾り出す機械みたいな口のまま顔を上げた。
白いスーツが目の前に座って、店員からメニューを受け取っている。
席は他にいくらでも空いている。するとこの人が高校三年生の母親か。
ふがふがしていると、「ゆっくり食べて」と言って、メニューを指して自分も何か注文している。
お姉さんじゃないかしら。
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