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「俺は、そんなことを言ってるんじゃねぇよ。少しは手加減しろよな」
私は、彼の言っていることがあまりにも自分が思っている事とはかけ離れていて、呆気に取られてしまった。
彼はそんなことなんてお構いなしに話を進める。
「俺は、叩かれ慣れてんの。一々、口答えしてたら霧がねぇ」
彼がどれ程の女性と付き合ってきたか、知らないけれど、いや、知りたくもないけれど、「叩かれ慣れている」と軽々しくそう言い切った彼に、少なからず軽蔑する。
「本当に、最低ね」
私はすぐにこの場から離れたくなった。
何が彼をこのようにしたのか、私にはわからないけれど、彼とは今後一切関わりたくないと思う。
きっと、ろくなことがない。
「昨日から最低最低って言うけどさ、お前に何も迷惑かけてねぇだろう?」
彼は私の気持ちを一切察してくれることはない。
「迷惑?キスしようとしたじゃない」
「それって迷惑なの?」
何を言われているのか分かっていない子供の様に、彼は平然とそう言った。
話している時間が勿体ない。
早く、教室に行きたい。
教室へっと思うことが初めてで、それに少し嫌になった。
「貴方と話していても、時間の無駄だわ。そこ、どいてくれる?」
「やだ。だって、俺、お前と話したし」
そう言った彼の意図が、私には本当にわからなかった。
いや、そんな言葉すら、彼から言われると思ってもみなかった。
彼の方を見ると、バツの悪そうな顔でこっちを見ていた。
「は?意味が分から………」
ガラガラガラ
扉が開く。
「痛っ!」
それと同時に、彼の声が部屋に響いた。
「何すんだよ!」
どうやら、叩かれたらしい。
本当、今日はついてない日だわ。
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