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「お前ら、いつもこそこそとこの部屋から簡単に逃げてんのに、今日はやけに威勢が良いな。そのおかげで、先生、気づいちゃったよ」
彼の後ろにいたのは、まさに、私のクラスの担任教師。
よりによって、担任とは、私の運もここで尽きてしまったらしい。
これも全て、あいつのせいだ。
「何が、気づいちゃったよ、だよ。この時間は、授業だろう?いつも!」
彼も知っているらしい。
どうりで、木曜日はこの時間に来るわけだ。
それを把握している私もなかなかの遅刻常習犯。
それよりも、彼がいつもこの時間に登校している事実を知っている自分に、本当に呆れてしまう。
「なんでそんなこと知っているのかな、橘くん。でも残念だな、今日は先生、他の先生にこの時間譲っちゃって、丁度、暇してたところなんだよね」
ニコニコとほほ笑む担任教師が恐ろしい。
目が笑っていない。
「そんなのあり?」
「そこの黙り込みを決めているお嬢ちゃんに聞いてみな。この時間は、丁度、俺のクラスの授業だから、知っているよね、高ノ宮怜」
ご丁寧に、フルネームで答える担任教師。
いまだに目が笑っていなくて、合わせられない。というか、合わせたら負けね。
「ははっ、そうでしたっけ?すみません、覚えていません。それと、私はこの男子生徒と一切の関わりがありません。そろそろ授業行きたいので、そこ通してくれませんか?」
早くここから出たい。逃れたい。
「は?ずっりー!ゆきちゃん先生!」
ゆきちゃんとは、愛称だ。本名、横山幸二。
私のクラスの担任教師。
「僕は高ノ宮さんとここでお喋りしてました。先生も聞こえてここに入ってきたんでしょ?それが事実です!」
「ちょ、それは貴方がちょっかい出してきたんでしょ!」
「お喋りしてたのは、事実です」
彼は、やってやったとばかりに、ニヤッと笑う。
それが腹立ってしょうがない。むかつく。
「まー要するに二人とも別室で俺とお喋りがしたいわけだ。さぁ、常習犯二人、行こうか」
ニコニコと変わらない笑顔を見せる担任。
私たち二人は、その悪魔の笑顔に逆らうことができず、渋々悪魔の後ろをついていった。
言うまでもなく、みっちり説教を食らった。
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