第一章 From Shadow

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「本当、最悪だわ」 私たちは生活指導室を後にし、各教室に向かうため廊下を歩いていた。 長い長い説教は、とんだミスだわ。 私は、この男と関わるとろくなことがないと改めて思った。 「ははっ、ゆきちゃんって意外に怖いな」 隣に視線を向けると、全く反省のしていない橘勝がいた。 私は、はぁーっとため息を吐く。 全て、こいつのせいだ。 朝、こいつと出会わなければ、いや、悪夢は昨日から続いているのかもしれない。 それとも、もっと昔。 考えたら、霧がない。 だから、もうこういう運命なのだと受け入れるしかないのかな。 私があの場所から、見ていること。 橘勝がいつもと違う場所から帰ったこと。 仕方ないことだった。 だけど、それで納得できるほど、私は大人になっていない。 所詮、16の子供なんだ。 「お前、何組?」 唐突に、彼が聞いてきた。 「教えるわけないでしょ?」 決まり文句の様に私は彼に言う。 彼はそれすらもわかっているようで、私の些細な抵抗も物ともせず、さらっと言いのけたのだ。 「1組でしょ。ゆきちゃんのクラスらしいし」 いたずらに笑う彼。 私はムッとする。というか、むかつく。 「貴方には、関係ないことでしょ」 「俺の名前は、橘勝!勝でいいよ」 どんなに冷たく言い返しても、彼は少しも動じない。 逆に、彼から関わろうとして来るようにも、見えなくもない。 一体、なんなの? 私に関わらないでよ。
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