2人が本棚に入れています
本棚に追加
日が沈み切った頃、私は輝く繁華街からこぼれた暗い影で一夜を過ごす。
街灯にも、月の光でさえも照らされる事のない、夜にできる影の中が私の居場所。
建物の片隅の階段。
誰にも気づかれる事のない、影。
私は毎日、ここにいる。
ここは比較的ラブホ街に近いから、煌く星たちの下で激しく絡み合う男女が、密着しながらそちらへと歩く姿をよく目にする。
私がいる場所からは、何もかもお見通し。
世の中は不公平。
神様はきっと、空の上で笑ってる。
だけど、私だってここからずっと眺めてる。
ぼーっと朝を来るのを、待ちながら。
一人のある男を、毎夜毎夜と、瞳に映しながら。
そして今日もまた。
綺麗な女性の腰に手を回して、ラブホ街へと消えていった。
それでも、私には関係ない。
恋愛の一つも経験したことないあたしには、縁も縁もない世界の人だから。
だけど、私は知っている。
橘 勝(たちばな まさる)という妖艶な雰囲気の男を。
最初のコメントを投稿しよう!