第一章 From Shadow

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日が沈み切った頃、私は輝く繁華街からこぼれた暗い影で一夜を過ごす。 街灯にも、月の光でさえも照らされる事のない、夜にできる影の中が私の居場所。 建物の片隅の階段。 誰にも気づかれる事のない、影。 私は毎日、ここにいる。 ここは比較的ラブホ街に近いから、煌く星たちの下で激しく絡み合う男女が、密着しながらそちらへと歩く姿をよく目にする。 私がいる場所からは、何もかもお見通し。 世の中は不公平。 神様はきっと、空の上で笑ってる。 だけど、私だってここからずっと眺めてる。 ぼーっと朝を来るのを、待ちながら。 一人のある男を、毎夜毎夜と、瞳に映しながら。 そして今日もまた。 綺麗な女性の腰に手を回して、ラブホ街へと消えていった。 それでも、私には関係ない。 恋愛の一つも経験したことないあたしには、縁も縁もない世界の人だから。 だけど、私は知っている。 橘 勝(たちばな まさる)という妖艶な雰囲気の男を。
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