第一章 From Shadow

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太陽が昇る頃、まだ薄暗い夜明け前の空。 私は、お星様とお月様と交代するかのように、取り残された影から出る。 静かな夜明けが私をぐるっと囲んで、いつも独りぼっち。 家へと帰る。 帰ったところで、さほど変わらないのだけど 「ただいま」 そんな言葉さえ、暗い部屋が飲み込んでしまう。 電気も私はつけずに、体の汚れを流すために、お風呂場へ。 体を洗って、シャワーに打たれて、冷たい滴はあたしの体を伝っていっては。 排水溝へと流れていった。 お風呂から上がると、暗かった部屋には、眩しい朝日が差し込んで、部屋を照らす。 そんな中で、あたしの自慢のふかふかなダブルベッドで眠りについた。 目を覚ます頃には、南の空に太陽が昇ってた。 カーテンから差し込む太陽の光が、どことなく嫌だった。 あたしは起き上がって、制服に着替えて、学校に向かう。 私立松木田高校。徒歩十分。歩いて登校。 着いたら、すぐに生活指導室へ。 いつものように、無断で入って、無断で遅刻者名簿に名前を書く。 私の名前の上には、「橘 勝」。 私は教室へ向かう。 授業中の静かな廊下を歩いて、7組へ。 授業の途中に教室へ入って、生徒も先生も一瞬私に注目するけれど、すぐに授業再開。 ほんと、つまらない。 なにか言えばいいのに、いつもこんな感じで。 私は気にせず、窓側一番後ろの席へ。 いつものように、窓の外を眺めた。 広いグランド。体育をする生徒。 今日は、水曜日。 だから、いつも一際目立つ一人の男子生徒が体育の授業を受けている。 サッカーゴールに、シュートを決めて、大活躍中。 嬉しそうに笑う、それがまさに橘 勝。 「また、勝君だよ。本当にかっこいいよね」 どこからか聞こえてくる女子生徒の声に、私はうんざりして、橘 勝から目を離した。 私が知っている橘 勝は校内一のモテ男。 そして、毎夜毎夜と、ラブホ街へと姿を消す妖艶な雰囲気の男。
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