第一章 From Shadow

4/11
前へ
/13ページ
次へ
授業終了の鐘が鳴る。 今日もいつも通り退屈な授業が終わった。 私はHRが始まる前に、素早く教室を出た。 教室の外は、授業を終えた生徒と先生がごった返している。 私はその間を潜り抜けて、校門へと続く渡り廊下へと歩みを進めた。 前から歩いて来る二人の男子と複数の女子の集団。 あの男はやっぱり人気者。 それは、まさに橘 勝。 「勝ー!さっきのゴール流石だね」 「おう、さんきゅっ!晴太にも勝てたし、今日良いことありそうだな」 「俺、一応サッカーしてたんですけど。どんな運動神経してんだよ」 「勝は、なんでもできるのよ。あんたになんか、負けるわけないじゃん」 そんな会話をしながら、私の横を通りすぎていった。 私と橘 勝の接点はゼロ。 橘 勝が、この学校では有名過ぎて、一方的に知っているだけの話。 これもただの日常の一コマ。 私が橘 勝を気にする意味がない。 だから私は、気にせず学校を出た。 家に着いたら、まずシャワーを浴びた。 昼の私を洗い流して、真っ黒な闇の夜へ。 瞳に映る暗闇の部屋は、さらに私を光すら見えない暗黒へと誘うの。 お化粧をして、服を着て、そして、再び家を出た。 夕暮れ時の不気味なオレンジ色。 そんな夕日の熱が私を囲むから、私は愛用の日傘でガードした。 だけど、真っ暗な夜へとなるのは、そう時間がかからなかったように毎回、私は思う。 夜の闇は、確実に私を食い尽くしていくから。 そして、夜が来たら、私はある階段の片隅へ。 輝く目の前のストリートをボーっと眺めて、時間が過ぎるのを待っている。 それともう一つ。 同時刻頃に、いつも女性を連れて歩く橘 勝を眺めてる 毎晩毎晩、同じ映像。 橘 勝だけじゃない。 他の人だって、きっと同じ人。 ここにきて、もう何年になるのか私にはわからないけど、何も変わらない日常。 橘 勝に限らないのだけど、橘 勝は今の生活に満足しているのだろうか。 毎晩、違う女を連れて、毎晩同じ道を通って。 つまらなくないのだろうか。 問いかけても返ってくるはずがない。 だから、今日も橘 勝は女性を傍らに置き、私の前を通る。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加