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授業終了の鐘が鳴る。
今日もいつも通り退屈な授業が終わった。
私はHRが始まる前に、素早く教室を出た。
教室の外は、授業を終えた生徒と先生がごった返している。
私はその間を潜り抜けて、校門へと続く渡り廊下へと歩みを進めた。
前から歩いて来る二人の男子と複数の女子の集団。
あの男はやっぱり人気者。
それは、まさに橘 勝。
「勝ー!さっきのゴール流石だね」
「おう、さんきゅっ!晴太にも勝てたし、今日良いことありそうだな」
「俺、一応サッカーしてたんですけど。どんな運動神経してんだよ」
「勝は、なんでもできるのよ。あんたになんか、負けるわけないじゃん」
そんな会話をしながら、私の横を通りすぎていった。
私と橘 勝の接点はゼロ。
橘 勝が、この学校では有名過ぎて、一方的に知っているだけの話。
これもただの日常の一コマ。
私が橘 勝を気にする意味がない。
だから私は、気にせず学校を出た。
家に着いたら、まずシャワーを浴びた。
昼の私を洗い流して、真っ黒な闇の夜へ。
瞳に映る暗闇の部屋は、さらに私を光すら見えない暗黒へと誘うの。
お化粧をして、服を着て、そして、再び家を出た。
夕暮れ時の不気味なオレンジ色。
そんな夕日の熱が私を囲むから、私は愛用の日傘でガードした。
だけど、真っ暗な夜へとなるのは、そう時間がかからなかったように毎回、私は思う。
夜の闇は、確実に私を食い尽くしていくから。
そして、夜が来たら、私はある階段の片隅へ。
輝く目の前のストリートをボーっと眺めて、時間が過ぎるのを待っている。
それともう一つ。
同時刻頃に、いつも女性を連れて歩く橘 勝を眺めてる
毎晩毎晩、同じ映像。
橘 勝だけじゃない。
他の人だって、きっと同じ人。
ここにきて、もう何年になるのか私にはわからないけど、何も変わらない日常。
橘 勝に限らないのだけど、橘 勝は今の生活に満足しているのだろうか。
毎晩、違う女を連れて、毎晩同じ道を通って。
つまらなくないのだろうか。
問いかけても返ってくるはずがない。
だから、今日も橘 勝は女性を傍らに置き、私の前を通る。
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