第一章 From Shadow

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私はその場から逃げ出した。 逃げ出すという表現はおかしいかもしれない。 だけど、この場に居たくなかったのもまた事実で。 だから、私は家まで走った。 止まることなく、全速力で走った。 私の住んでいるマンションに帰った頃には、息も上がりきっていて。 胸が苦しくて、ふらふらとまっすぐ歩くことすら困難な状態だった。 「ゲホッゲホッ」 咳をしてしまうと、普段の息遣いがわからなくなる気がして、凄く怖くなる。 私は、寝室の自慢のダブルベッドで横になった。 気が遠くなっていく。 体力は昔からなかった。 別に運動音痴というわけでない。 だけど、体が弱いせいか、体力がついてこなかった。 また一層、気が遠くなる。眠たい。 いまだに、息苦しくて、胸が圧迫される。 だけどそれ以上に、胸のモヤモヤが気になって、苦しい。 意味わかんない。 あんな奴の為に、私が一喜一憂するのは、本当におかしい。 なのに、橘 勝のあの笑顔が離れない。 嫌になって目を閉じても、私に触れようとした橘 勝が離れなかった。 次に目を開ける時には、朝日の昇った8時のこと。 太陽の光が、私を照らして熱かった。 太陽は天敵。 まるで吸血鬼みたいに太陽を嫌って、月を求めてる。 いつからそうなってしまったのか、もうわからない。 思い出したくない。ただ、それだけなのかもしれない。 今日は憂鬱な始まり。 私は、登校するために、シャワーを浴びて、用意した。 今日は少し早めの登校。 家を出たのは、10時を過ぎた頃。 朝ごはんの支度なんかをしていたら、遅くなってしまった。 だけど、いい。 この時間は、生徒指導室に先生は誰もいないはずだから。 私は登校する。 太陽に晒されないように、日傘をさして。 それが、私の太陽から身を守る術。
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