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学校に登校すると、いつものようにすぐ生活指導室へ。
無断で入って、手慣れたように遅刻者名簿に名前を書く。
『高ノ宮 怜』
いつもの習慣なのか、名前を書いた後に自分の名前の上を見てしまう。
だけど、今日はなくて、まだ来ていない。
なんて思ったけど、いちいち確認している自分に気が付いたら、無性に腹が立ってくる。
誰もを騙すあの笑顔が憎らしい。
昨日の出来事がフラッシュバックして、私はやるせない気持ちになった。
なぜ、私は彼にこんなにも幻滅しているんだろう。
彼があんな男だなんて、わかっていたことなのに。
毎夜毎夜と傍らに違う女性を連れて歩く、妖艶な男。
それが私が見てきた橘 勝。
なのに、本人に直接会って、言葉を交えて。
そしてら軽率な行動をしてきた彼に少なからず絶望した。
わかっていたはず。
でも、どうしてこんなにも胸が苦しいの?
自分自身に問うても、返ってくるはずがなくて。
静寂な生徒指導室が私を襲った。
くだらない事を考えていたせいか、生活指導室の扉が開いた。
本当に今日はついてない。
入ってきたのは、紛れもない橘 勝。
彼も少し早い登校。
毎日見てきた彼の登校時間を知っている自分に、今はやけに嫌になった。
「あ、お前」
そう言われて、自然と目が合う。
私は咄嗟にそらした。
きっと彼は、昨日の女が私なんだと気づいてる。
だけど、私は今の彼とは関わりたくない。
ずっと、頭の中に流れづつけている昨日の橘 勝の笑みがその理由。
そして彼を見ていると胸が苦しくて、息ができなくなるような気がするのもその原因。
だけど、この場から逃げたいのに。
唯一この部屋から出れる扉は、彼の後ろ。
絶望的なシチュエーションに私は、彼が次の言葉を発することに待つしかなかった。
「俺の頬、真っ赤なんだけど」
そういって、彼は自分の頬に指をさす。
彼の綺麗に整った顔には、白い湿布。
湿布を貼るほどひどいのか、彼はムスッとした表情を私に向ける。
「自業自得でしょ?それとも私が悪いと罪を擦り付けるわけ?」
自分でも思うくらい可愛げのない言葉。
別に彼の前で可愛くいようと努力する気はないのだけど、私は一刻もこの場から離れたくて。
嫌な言い方になってしまう。
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