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【Love is all】 #2
結城愛、愛と書いてめぐと読むのがあたしの本当の名前らしい。
即ち、あいと呼ばれても違和感ないはずなのだ。
あたしは5才から15才までアメリカに住んでいて、向こうで大学も卒業してはいるけど、日本でも高校に通っていた。
どうやら頭もいいらしいあたしは、高校の授業を受けなくても、その教科書の内容をほぼ完璧に覚えていて、あんな記憶喪失になって、警察に保護されていたというのに、テストの結果はそれ以上ない数字ばかりが並ぶ。
なに?あたし、完璧?
顔もスタイルも頭も運動神経もいいじゃない。
こんなあたしに釣り合う人なんて、どこを探してもいるとは思えない。
それを探してあんなところに立っていたんだ?
自分を思い出すというより、理解した。
忘れた自分がなんなのかもわからなくなってくる。
性格は…たぶんこのままだ。
はっきりいって悪いと思う。
そんな悪い自分が好き。
だって、完璧だらけの人間なんてつまらないじゃない?
…なんて思う自分がかわいい。
家の地下には射撃場なんてものがある。
パパの仕事の都合だろう。
あたしは新しくもらったリボルバーを片手で握って、的に向かって構える。
ばーん。
撃つ素振りだけして、また太ももへ銃をなおした。
家族のことは理解できないし、自分の才能も理解しきったわけじゃない。
なくした自分という記憶と一緒に、あたしは生まれ育った場所や、接した人の記憶をなくしてしまっていたから。
小さい頃からこうなんだと言われれば、そうなのかもしれない。
でも受け止めるには、あたしのまわりはアンダーグラウンドだ。
世間の一般的なものとはかなり違うことぐらいはわかる。
そうなのだろうと理解して過ごすしかない。
記憶は戻る様子もないから。
まわりの同年代は子供に見えた。
一緒にいても頼られるばかりで楽しくない。
校内の秀才くんも子供のプライド着飾って大人のように見せているだけで、つまらない人だなって思ってしまう。
あたしには友達はいなかったし、憧れるような人もいない。
藤川さんのことをふと思い出す。
もっと深くつきあえば、きっとつまらない人だと思うのだろう。
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