【True blue】

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千夏と出会って3年。 これからも同じ時間が流れることだけ望んでいた。 求められているものはわかっていても。 与えるつもりなんかなかった。 メジャーデビューして1年。 ようやくツアーなんてものをさせてくれることになった。 いくら俺やメンバーにそれなりの才能があっても世間は甘くない。 小さなツアーだ。 それでも今までやってきたものより大きな場所を数ヶ所回ることになる。 俺の歌はまだまだだし、メンバーの楽器の腕もまだまだ。 ここまできたのは完全に千夏やファンのお陰。 ツアーに出る前の最終調整をして、明日からのツアーに備える。 どれだけやっても緊張するし、ちゃんと声が出るのか不安。 それでもライブのほうがいいバンドと言われたい。 まったく俺らを知らない人がたくさんくるだろう。 緊張しているなんて、俺らしくないと言われそうで、いつもの俺に戻ろうと千夏に電話でもかけようとした。 話す内容はツアー中の留守番よろしく。 たったそれだけ。 だけど、あいつなら言ってくれる。 「がんばって。ハルちゃんなら大丈夫だよ。最終日、最前列で待ってる」 その声が耳に聞こえた気がして、本当にその声を聞こうとメンバーから離れて歩きながら携帯を手にする。 もう一人のDualのメンバー。 他のメンバーには話させてやらない。 だから離れたのに。 「ハル、ここにいたの?」 なんて後ろから声をかけられて振り返ると、こんな新人バンドのマネジメントをしてくれているミキがいた。 ミキと千夏は相性が悪いのか、あまり互いに話さない。 電話をかける機会を失って、連れ戻されるようにみんなのところへいく。 帰りはミキの運転で全員家に送ってもらった。 俺が最後。 荷物運びを少し手伝ってもらって家の前まで。 玄関の鍵を開けて荷物をおろす。 「ハルと二人きりなんて危険だから早く帰るわ」 ミキは軽く言ってくれる。 「何が危険?俺が美紀に手を出すって?期待されてる?」 「年上好きなんでしょ?」 つきあった女が年上ばかりだからか、よく言われる。 そんなのこだわっているつもりもない。 ただ手近にいて、そういうタイミングだからつきあったみたいなものばかり。 俺が狙われていて、年上のほうが捕獲上手なだけだろう。
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