【Diary】

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久しぶりの学校は、俺にとっては4ヶ月ぶりとなる。 そのうち2ヶ月はあいつが通っていたから、忘れられた存在にはなっていなかった。 あいつと俺はけっこう違っていたようで、まわりには今のほうが俺らしいって言われる。 そりゃそうだ。 あいつにとっては初めて会う人間ばかりで。 俺はそこまで人見知りしないとも言い切れない。 今の関係は今までの年月が築いたもの。 けっこう…、あいつを理解してみると、つらい環境だったんじゃないかとも思う。 「遥、学年末テスト、受けるの?」 里英は貼り出されたテストの日程をメモにとりながら、その隣にいた俺に聞いてくる。 「無理。3学期、授業、受けた記憶もないし。受けても0点にしかならない自信ありまくり」 俺は貼り出されたテストの日程を見たまま里英に答えて。 それでもぎりぎり進級はできるらしい。 2学期末、あいつがテストを受けていたからでもあるだろう。 俺の記憶はどんな授業だったかも覚えていない。 「進学するつもりはないけど、けっこう不利だよなぁ」 俺は溜め息をつく。 「そうだね。遥もいろいろ大変だね」 俺はうんうんと頷いて、テストのかわりにやれと教師に出された課題を思うと、かなりの憂鬱。 俺は全校生徒がテスト中に一人で別室で課題の予定で。 しかも3限程度のテスト時間割、俺だけ6限。 春休みなんてないようなもの。 それが進級のための補習だと言われた。 留年したくはないし、春休み以上の期間をベッドで過ごしたし、それでいいとは思うけど。 あいつがでかい事故を起こしたせいだ。 いや、あいつは確かに俺で、結局は俺だけど。 どうせまた急ぎすぎてドジったんだろ。 日記にも一度事故りかけてたのは書いていたし。 俺はふと視線を奈々に向けた。 奈々の友達が里英だけというわけではないけど。 奈々は一人、自分の席で頬杖ついて、窓の外を見ていた。 俺の胸の奥にぐちゃぐちゃなものがあって。 俺は奈々に声をかけることもできないで、あの記憶を気にしないでいることもできないでいた。 里英をまっすぐに見ることも…できない。 彼女は里英なのに。 …奈々が声をかけてくれれば…なんて、今の俺、なんか日記をつけていたあいつとたいして変わらない。
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