【Diary】

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奈々は俺を無視していたし、視線があうこともなくて。 里英とも入院していたときのように話すこともできなくて。 弾まない会話を里英としながら帰路を歩く。 つなぐ手も差し出すことができない。 俺は家に帰ると、なんかあいつに会いたくなって。 なくしていた間の俺の記憶を取り戻すように、またあのノートを開いた。 『12月10日 期末テストの日程が出ていた。 まわりに合わせるように、よくわからないながらも、とりあえずメモっておいた。 奈々はまだ怒ってるのか、今日も呼び出しなし。 もう学校で声をかけてもいいよな? 放置はされたくない。 怒っているなら謝りたい』 『12月11日 放課後、思い切って声をかけようとしたら、夜の8時に駅でとの呼び出しかかった。 浮かれすぎて、里英に変な目で見られて、ちょっとあせる。 駅の人のこないようなところで、この会話もできなかった数日分のキスをした。 けっこう濃厚。 すごくうれしかったし、また好きと言って…って奈々が言うから、大好きって言ったのに。 奈々は泣いた。 俺がおまえじゃないから? でも奈々は俺のこと好きなはず。 言ってくれなくても、キスでわかる。 里英とするキスよりも、奈々とするキスのほうがいい。 ただ唇を擦りつけあうだけのキス。 甘い。頭の中が白くなるくらいのキス。 思い出しただけで、なんかやばいぞ、俺。 こんな俺を笑って。奈々。 この日記、奈々に見せてやれば、俺のこと、わかってくれそうな気がする』 『12月12日 俺の頭の中は奈々のことだらけ。 あと10日もすれば終業式。 昨日、泣いたけど、奈々は俺を呼び出してくれた。 セックスしたあと、クリスマス、どうする?って聞いたら、俺の彼女は里英だと言われた。 さびしくなった。 けど、何も言えなかった。 奴隷は奈々を本気で好きじゃダメなのか? イルミネーション、また奈々と見に行きたい』 こいつが奈々を好きだと書けば書くほど、俺の中にその気持ちが蘇る。 その情景も記憶にある。 俺ではないけれど…、それも俺だ。 奈々を抱きしめたくなってくる。 俺はこいつじゃないから、呼び出しなんて絶対にないこと。
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