【Diary】

14/27
前へ
/35ページ
次へ
『12月22日 終業式だった。 帰り道、俺は里英に今の自分の気持ちを正直に話した。 知っていたって里英は答えた。 それでも俺が好きだから、俺が元に戻るのを待つって。 だから、俺は俺で。 元に戻るなんて意味がわからない。 俺にそんな宣言してくれなくていい。 俺は、里英のそういうところが受け入れられなかった。 おまえに理解は求めない。 おまえはおまえの気持ちで、里英とつきあえばいい。 絶対に今の俺をなくしたくない。 奈々からは呼び出しなしだ。 俺はおまえが嫌いだ』 里英が、今…いるのは…。 俺は一度、里英と別れてる? そんな話、里英から聞いてない。 奈々も何も言ってない。 別れたって奈々に言えばいいのに、こいつ、言わなかったんだろ? …それは、嫌いな俺のこと考えていたから? なに、こいつ。 やっぱり俺じゃない。 …けど、俺…なんだよな…。 『12月23日 冬休み。呼び出しなかったら姿を見ることもできない。 メールすればいいのにって思っても、文字を打ち込もうとする指は迷う。 会いたい。 その文字が刻めない』 『12月24日 イルミネーション、一人で見に行って、誰もいない学校でバスケの練習してた。 寂しい男。 でも里英といるよりはいい。 里英が嫌いだとは言わない。 受け入れられないところはあるけど、それは里英のせいでもない。 俺は記憶をなくして、新しい自分で、奈々が好きなだけ』 『12月25日 記憶をなくした俺が悪い? だったら俺じゃなくて、前の俺のせいだ。 奈々に会いたい。 クリスマスカラーで包装されたプレゼント、渡せないまま』 俺はそのプレゼントを探す。 こいつのことだ。 ずっと渡せていないだろう。 大きさも何が包まれているのかもわからない。 俺はクリスマスカラーを目印に、見慣れないものを探す。 けど、どこにもそういうものは見当たらなかった。 日記なら、もっとちゃんと、どこでなに買ったとか書けよっ。 ものすごくダサいものだったら、こいつのこと馬鹿にしてやるのに。 …って、俺、なんかこいつに対抗してるんだよな。 俺のはずが、俺じゃないから。 実は二重人格で…っていうのならいいのに。 こいつは…いない。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加