【Diary】

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俺は11月から1月までの記憶がない。 その2ヶ月、何をどうやって過ごしていたのか記憶がない。 バスケの練習試合をしていて頭ぶつけたのは記憶にある。 そこからあとが真っ白だった。 気がつくと2ヶ月も過ぎていて、更に胸が痛い。 どうやら俺は事故って記憶を取り戻したらしい。 胸骨骨折なんてして、退院できるのはよくて3月。 下手したら死んでいたかもしれない事故だったとか。 まったくもって意味不明。 それを親に聞かされて、俺が呆然としたのは理解してほしい。 けど、記憶を失う前に彼女だった里英が病室にきてくれて。 俺は別れていなかっただけでも、ちょっと安心した。 だって俺、里英とつきあって、まだ1ヶ月っていうところで記憶なくしたし。 俺が惚れて、里英が彼女になってくれたのに、記憶なくしている間に別れていたら、あんまりだろって思う。 里英は毎日、見舞いにきてくれて、暇な入院生活を送る俺のそばにいてくれる。 記憶なかった頃のことを聞くと、俺は里英のことも忘れていたらしい。 だけど奈々っていう小学校からの連れが、俺の彼女は里英だと、俺に言い聞かせてくれたらしい。 それがなかったら、今頃、俺のそばに里英はいなかったかもしれない。 奈々に感謝してやろうと思う。 奈々には、けっこう里英とのことで世話になってると思う。 奈々の連れが里英だから。 「奈々ちゃん、お見舞いにきてくれないのね。遥の手術中、ずっと心配して付き添ってくれていたのに」 母親は里英が帰ったあとの病室で、そんな言葉を漏らした。 「なんで?」 俺が不思議に思って聞くと、母親のほうが不思議そうに俺を見る。 「遥の彼女、奈々ちゃんでしょ?」 言われて俺は笑い飛ばした。 なんであんなチビの頃からのつきあいの女が、今更彼女なんだか。 「そんなわけないだろ。奈々のどこを見れば女って意識できるんだよ」 「…そうなの?いい子なのに。奈々ちゃん、来てくれればいいわね」 「来なくていいって、あんなやつ。里英との時間、邪魔されちまう」 俺は笑いながら母親に言って。 でもまぁ、長いつきあいだし、せっかく記憶も戻ったんだから一度くらい顔を見せにこいとは思う。
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