【True blue】

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どちらかと言えば…。 俺は千夏と過ごす時間を頭に浮かべる。 年下といるほうが楽しくて好きかもしれない。 馬鹿なことをやって笑って。 「…そうでもない」 「残念。期待して送ってきたのに」 「やっぱり期待されてる。こっちの部屋入る?ベッドあるよ」 俺は軽く誘ってやった。 それだけの遊び。 それを求められているから。 ミキは部屋に入ってきた。 電気もつけないまま、俺も部屋に入って、ベッドに座ったミキを抱く。 軽い女。 簡単な女。 メンバーにも同じように体を抱かせていそう。 喘がせまくって、楽しむだけ楽しんで、じゃまた明日と軽く別れる遊び。 シャワーだけ軽く浴びてベッドに倒れ込むように眠った。 眠って、1時間もたたないうちに目が覚めた。 何か物音を聞いた気がして起き上がる。 そういえばと思い出したのは、この家で女とセックスしたことがないこと。 胸の中に嫌なもやつきを感じて、部屋を出て、電気をつけた。 玄関は何も変わらない。 リビングのほうへいって電気をつけて見回した。 千夏がいるような気がして、探していた。 いなかったけど。 部屋は出る前より整頓されていて、俺がいない間に千夏がきたことがわかる。 「…千夏?」 その名前を呼んで、また探していた。 いないのに。 ベランダをトイレを風呂場を。 いないのに。 眠れなくなった。 この部屋でミキに手をつけたことが溜め息になる。 裏切りまくっているくせに、それだけはしないと決めていた自分がいたから。 千夏がおいていったらしい譜面。 そこにある俺へのラブレターのような詞を眺める。 これだけはなくしたくないらしい。 千夏の俺へのその気持ち。 『愛してるなんて言えばあなたは馬鹿にするけど あたしにはそれしか言えない あたしはあなたしか見えない』 …馬鹿。 でも…何よりも俺に自信を持たせる。 少しだけ気を取り直して、何か夜食になりそうなもの食べて腹を膨らませて寝ようと思ってキッチンにいった。 パンを焼いていると、突然、大きな音が響いた。 部屋のほうを見ると、ないと不便だからと千夏が置いていった棚にあった時計が落ちていた。 地震もなく、他のものは何も落ちていない。 ただ、それだけが落ちていて、拾うと壊れていた。
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