カケラ 第3話

【Diary】

『11月26日
毎日、里英といる。
毎日、里英と帰り道を歩く。
手をつないでほしいって言われて、手をつないだ。
俺は俺で、前の俺と同じようにはできないし、前の俺と同じ気持ちではいられていないと思う。
でも里英は俺のことが好きだって言う。
前の俺に言ってやれば？
俺に元に戻ればいいねって言うなら』

『11月27日
里英とデートすることになった。
憂うつ。
誰に言っても、なんで俺が憂うつになるかわからないだろう。
前の俺ならわかる？
俺はおまえじゃない。
でも、おまえで。
おまえであることを望まれて、おまえのかわりに生きている感じだ。
また意味不明なこと書いてる。
おまえって誰だよ、俺』

俺はわかる。
おまえって俺だろ？
やっぱり二重人格だろ。
……俺もおまえのかわりなんて無理だ。
奈々のこと、どうしてくれるんだよ？
学校いって顔を合わせたくない。
責任とれ。

…って、俺か。

『11月28日
あの人は見てるだけ。
なんか言って。
学校じゃないと会えない。
学校じゃ声をかけてはいけない。
それっていじめ？
俺はどうすればいい？
言うとおりに動いているほうが楽だ。
そう思っていたら、明日、朝６時に公園にこいって手紙がロッカーに入っていた。
朝弱いのに。
でも、久しぶりに話せる。話したい。
いじめられるのはいやだけど、がんばって起きよう』

『11月29日
奈々と俺の部屋でセックスした。
たぶん初めてした。
奈々も初めてだったと思う。

違う。前の俺にそういうことした経験があっても、俺にとっては初めて。
奈々はおまえのことが好きだからしたのか、俺のことが好きだからしたのか、俺にはわからない。

ただ、俺は奈々がして欲しいことをしただけ。
なのに、俺のほうが気持ちよくなっていたような…。
なんか恥ずかしい。
けど、抱きしめられると、うれしい。温かい。
不安とかそんなのどうでもよくなった。

奈々はでも、俺に望む。
学校では声をかけないこと。
里英とのデート。

なぁ？セックスしても彼女じゃないの？

でも奈々の言葉は絶対。

そういういじめ？』