【True blue】 #2

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ツアーの途中、店に食べにいったら偶然、追っかけのファンに会った。 初期からのファンは顔も名前も覚えている。 新しいファンは増えすぎていて、そこまでファンサービスなんてできたものでもないし覚えていない。 一緒に飯を食いながら、最終日だけじゃなくて、こいつらみたいについてこいよって千夏に思う。 次にツアーがあったら、無理矢理学校休ませて連れ回してやろうと考える。 「そういえばハル、ナツ、記憶喪失になったみたいだよ?連絡とれてる?」 思いがけないことを聞かされた。 電話がなくて当たり前? …俺のことも忘れたのかと問い詰めてやりたい。 あんなに好きだと言いまくって追いかけていたくせに。 忘れた? おまえが俺に書いたラブレターが何枚あると思っている? おまえが俺に惚れてるんだろうがっ。 ……なんて思ってみても。 いなくなった。 その事実は変わらない。 考えてもみなかったことが起きている。 どうするべきか悩んだ。 このままいなくなってしまえと悩むのが面倒に思ったりもした。 悩めるほど、俺は……なくしたくないらしい。 ツアー最終日。 千夏が記憶をなくしていても送りつけたチケットでライブにくると賭けた。 最前列中央。 俺の真ん前。 千夏の席はそこに用意した。 俺はその隣の席に座って、客入りを眺める。 バレたら騒がれそうだからサングラスかけて。 それでも俺を見てくるのもいる。 ハルに似てますよねと知らずに声をかけてくるのもいる。 ある意味恐ろしいことをしているのは重々わかっている。 それでも千夏に直接会って、本当に俺を忘れたのか確認したかった。 千夏はなかなかこない。 このままこないのかと思ったら、ぎりぎりになってきやがった。 お陰で俺の計画、千夏とゆっくり話すのも難しくなった。 俺に気がつく様子もなく、席について開演を待っている。 じっと見ていると、なんだろ?こいつみたいに見てきやがる。 ムカつく。 惚れた男ぐらい覚えておけ。 自分が千夏に見せてきた態度を思い出す。 いや、これはある意味、チャンスというものなのかもしれない。 千夏と出会いからやり直すチャンス。 どんな形であれ、千夏はいずれいなくなる。 別れなくても。 どうせ千夏の記憶はない。 だったら…。
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