【Two you,One me】

25/25
前へ
/34ページ
次へ
『芙由はどうなる?』 …意外と優しいんだね。 友達もたくさんいたというし、中原を殺そうとしたのは忘れてあげる。 …大丈夫。 僕と中原はつきあってもいない。 僕がいなくなれば、中原はまた違う恋愛を始めていく。 君に願うのは、僕のふりをして中原に構ったりしなくてもいいよってことかな。 下手に構わなくても、中原ならすぐにいい彼氏ができるよ。 『芙由を置いていくな。そんな話、話してもいないだろ』 話してない。 ……願うなら、中原が本当につらいときには、僕がそばにいたい。 でも君にそれを求めたりはしない。 君には中原に近づいて欲しくない。 『俺が近くにいなければ、俺の中でうっすら浮いて、芙由を見守ることもできないだろ。芙由がいつ本当につらいと思ってるかもわからないだろ』 わからないんだろうね。 でも僕はそれでいい。 たまにはこのアルバムを開いて、中原を見せてくれればそれでいい。 僕の指は中原の写真を撫でる。 ぽとりと雫がその写真の上に落ちる。 消えてなくなること。 こわいと思う。 でも…大丈夫。 僕の耳には中原の声が残ってる。 大丈夫だよ。 何度も言ってくれたその声が残っている。 僕の鼓動がとくんとくんと胸の中で刻まれる。 水着姿の、浴衣姿の、文化祭の、体育祭の、いろんな中原が浮かぶ。 初めて恋をした。 初めてキスした。 「さよなら。ありがとう」 僕はアルバムの中の中原に告げて、そのまま途切れる意識に身を任せる。 楽しいことも、つらいことも。 君が生きて。 僕はたった一つの恋だけでじゅうぶん。 それでも…、中原。 君がどうしてもつらくて苦しくてどうしようもないときは。 僕を呼んで。 きっと、僕は君に会いに行く。 ただ一人の僕の大切な人だから。 弱いばかりの僕でごめんね。 それでも君を抱きしめて、癒してあげる。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加