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「…どこいくの?」
「とりあえずシャワー浴びれるところ」
「っ!?」
千夏は俺から飛び離れて身をかばう。
以前の千夏なら、あぁ俺の家かと細かく言わなくても理解しただろう。
そしてその態度は見たことある気がする。
「……あのなぁ。千夏を食うためじゃないし。汗だくだから、さっさと着替えたいだけ」
「だったら、あの会場で着替えてくればいいのに…」
「おまえ、俺の予想通りに楽屋来ないで逃げていたくせに。…最初の頃と行動パターン同じ。こうでもしないと、記憶なくしたおまえに会う方法もないし」
楽屋にくることなく逃げるのが行動パターン同じというわけではなく。
最初の頃、ちょっとからかうようにエロ見せたら、こんなんだったよなと思いだした。
期待させるだけさせて、俺がはずすのを覚えて最近は通じなくなっていたけど。
まっすぐに俺は自分の家。
当たり前のように千夏を家に入れて、汗だくの衣装を脱ぎ散らかして、まっすぐにシャワー。
千夏に素っ裸見られても気にしない。
下着姿ならメジャーデビューする前に楽屋で着替えているときに毎度のように見られている。
シャワーからあがると、なぜか服が用意されていた。
以前も千夏は俺のクローゼットを漁って、俺がシャワーを浴びている間に置いてくれていた。
洗濯物してもらっているし、日用品の補充もしてもらっているし、どこに何があるか把握している。
…覚えている?
着替えて髪を拭いながら千夏のところにいく。
脱ぎ散らかした服も片付けられている。
「千夏、あれは?あれ」
「あれってなに?」
「だからー、俺が風呂あがりにいつも…」
なんて試してみると、千夏はキッチンにいって冷蔵庫を開ける。
覚えていやがる。
俺のことは忘れているくせに。
「ポカリだよね?ツアーいっていたからないみたい」
「俺のこと忘れてるのに、そういうことだけは覚えてるのな」
俺が思うことは千夏も思ったみたいだ。
軽い記憶喪失なんだろう。
事故ったみたいだけど、外傷もなくて元気なものだ。
いつかは思い出すのかもしれない。
それでも今は俺との記憶をすべて失っている。
「…感覚はつきあっていた頃のままだけど…、俺とやり直すつもりない?」
「……本当につきあってた…?」
疑ってくれる。
かすかな記憶があるのか謎だ。
つきあってない…けど。
俺は嘘をつくりあげる。
以前に千夏が俺に望んでいたものを教えるように。
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