信長のダチ

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  「秀吉殿も、信長様に仕えてもう長いでしょう? 私と同じ立場なら、同じ事をしていたと思いますよ」 「いや、それはないな。ワシは、いかに信長様を穏便に帰すかしか考えられんかったよ」  草履取りをしていた頃から現在まで、秀吉は信長の背中を見てきた。信長が望む事、求めるもの、確かにそれらを汲む力は、秀吉も持っていると自負出来る。しかしそれも、長秀の前では過ぎた自慢だろう。 「長秀殿は、信長様がまだ、うつけと呼ばれていた頃からの付き合いじゃろ? その頃から信長様は無茶ばかりしとったんかの」  すると長秀は自身の口に人差し指を寄せて、秀吉の話を遮る。 「そのお話は、夜にお屋敷で話しましょう」 「お屋敷って、信長様のか? ワシは呼ばれてないが、邪魔してもいいかの」 「その方が信長様もきっと喜ばれます。昔話も含めましてね」  長秀がなぜ誘うのか、秀吉にはまだ意図が理解できない。気心の知れた長秀と差しで話す方が、信長は喜ぶような気がするのだ。だが、むげに断る理由もない。ひとまず頷くと、秀吉はここまで来たついでに、仕事を手伝う事にした。  
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