第一幕

8/15
前へ
/18ページ
次へ
―――!!! 大地、木々、海、空、鳥たちが騒ぎ始める。 そして、遅れて人々と家々の叫び声が連鎖。 揺れは最初の上下に叩きつけられる感覚から左右に強まっていった。およそ人は立っていられず街の機能も急停止した。 さぁ、私の仕事もこれからが本丸ですね。 縁側から離れ庭に腰を抜かしている綾子を見て無事を確認すると私は姿を消す。 「母さん!」 慌てて帰ってきたのか先ほどの自転車の人物が私をすり抜ける。コケたのだろうか擦り傷が所々に見える。 「おかえり~こんなになっちゃった」 「呑気言ってる場合じゃないって! ん? 誰かお客さん来てるの!?」 パニックの時は余計なものに目がいきやすくなりますが…グラスを見て気付くとは、中々感づくのが早いですね。 「? いや、誰も来てないわよ? …って、あんたこそ怪我してるじゃない!」 「俺はコケただけだって! まぁ、家に誰もいないならいいんだけどさ」 しっかり名刺の効果も効いていますね。 綾子に渡した最初の名刺は私自身を名乗る現世の最も手早い手段でもありますが、核心は死神と接触した記憶を徐々に消すという仕事道具。 これで私―死神と接触したという記憶を無くし、本能の片隅に死を受け入れさせるという仕事が成します。その人が自然と死ぬ前の準備をして死に行く行動=俗に言う死ぬ前の不気味な行動になるわけです。 まぁ、この効果も人によって効果がマチマチなので日々改良をしていますが…
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加