第一幕

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「まぁ、サイクリングなんて言う…っ!?」 ―言うほどの距離じゃない。 そう独り言を言おうと、思った時の出来事。 初めは目が回ったかと思い、次は後ろから誰かに揺さぶられたのかと思った。 しかし、そんなレベルの出来事じゃないと感じた時には自転車と共に地面に倒れていく自分が認識出来た。 「痛っ~!」 アスファルトに叩きつけられる身体と、続けて派手に音を立てて倒れるマイチャリ。 倒れた地面は不快な揺れを激しく起こし、側の家から悲鳴が聞こえる。 「マジか? こんな地震って…」 幸いにも怪我はかすり傷。生まれて初めて感じる自然の有様に恐怖するも母のことが心配になり倒れたチャリを起こし、押しながら走る。 「母さん!」 庭で腰を抜かしていた母を見つけ安心した。 「おかえり~こんなになっちゃった」 呑気な母に珍しく声を大きくしてしまった。 こういう時にすることは避難袋と通帳系を持って出る。あと食糧の確保。 先日点けっぱなしにしてたテレビの地震講座?がいきなり実践になってしまった。 幸いにも避難袋と通帳は目の前の家の中にある。 なら… 「俺はコンビニ行って暫くのメシ買ってくるから!」 家の中が洗濯機で回されるように家具が倒れていくのを見ても母は何処か的を得ない発言をしていた。 俺がしっかりしなきゃ! そして、急がないと皆同じことを考えて動き出す! 「息子よ、杏仁豆腐お願いね~」 「あればね! 俺が帰ってくるまで絶対に家に入らないでよ、母さん!」 なんて母だ、こんな状況でも自分の好物を注文してくるとは… それからはとにかく忙しかった。
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