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今回の大型地震影響による特別異例の宣告。
そして記憶に新しく、なにより少しの会話でどこか引き寄せられる性格の人物ということもあり、残された子供の様子を見に現世の綾子家付近へ足を動かしています。
久しぶりの風景は近づくたびに鮮明になっていきます。
息子は庭先で屈みながら軍手と鎌を持って雑草の処理をしていた。
「ん~…?」
「…」
私が家の前で立って様子を見ていると、ふと息子は顔を向けました。
「なんとなくだけど…いる?」
「…はい」
驚きました。やはり、この息子の眼は常軌を逸したものです。
「…う~ん、うっすら見えるけど声までは聞こえないな」
どうやら私の存在は多少見えるようですが、声までは聞こえないようです。
「その真っ黒な服装っていうか気配で、もしかしたらって思ったけど3回も見ると確信になったよ。死神」
「…」
声が聞こえないというので返事は足元にあった石を手に取り答えましょう。
―コツコツ…
「正直、最初は色々と考えたよ。あの時あーすれば変わったのではないか? こうすればどうだったとか…」
―コツコツコツ…
「でもさ、それをしてても結局何も進めないんだ。だから頑張っていくことにしたよ。母さんも一生懸命教えてくれたしね」
―コツコツコツコツ…
「それなのに、俺の前にも来たってことは…?」
―コツ
さぁ、これで伝えられたでしょう。次の仕事へ行きましょう。
『安心しました』
「全く…泣いちゃうじゃないか」
息子の姿にどこか安心した帰り道、いつかの会話を思い出す。
「綾子さん、お時間です」
「そっかぁ…まぁやることはやってきたから一先ず大丈夫かな? うん、あの子はしっかりしてるし!」
「自身の不安ではなくて?」
「ん~? 一人の母親としては子供の方が優先なのよ…あっ! でも一言だけ最後に!」
ありがとうね
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