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死神といえば現世では黒尽くめで端々が裂けた大きなマントを羽織り、首を刈るような大きな鎌、髑髏の仮面か血色の悪い顔をして死を象徴し振り撒く存在と未だに信じられているそうですが…現世の日本に忍者がいないのと同じです。 実際はこれから死にいく人物の間際に現れ死を伝える仕事―より厳密に言うならば、生前の行いや功績に評し、次回転生する際スムーズに生まれ変われるようその人の前に現れ死を口伝、宣告する生業。 この仕事によって死に行く者が死を知るため生前の不気味な、不穏な行動に繋がっているわけです。 格好に至っては…基本的な黒のスーツもしくは喪服がベーシックですね。あとは各個人の自由、仕事に支障の出ない範囲で。私はオールバックにメガネとフォーマルに。 「死神というよりサラリーマン」 私の姿と職業を伝えると約八割の人はこう言います。 (確かに似ていますね) 時刻は昼前。現世の小さな国の交差点。赤信号で止まっていると、左右に私と同じような格好の人物が並び思う。 少々遅れ気味ですが本日起こる地殻変動は歴史に置いても珍しい大きさ。よって、私死神としての仕事も数多の人物に伝えなくてはなりません。 正直大忙しです。部下たちも毎日残業をしています。出来ることならあっちこっちと電子メールのように飛ばしたいのですがそうなると死神としての定義が意味をなさなくなります。 何より突然来た死の宣告が添付されたメールなど現世の誰が信じましょう? 「…いけません。集中しなくては」 これから起こる地殻変動…一般的に言えば地震は201X年より現世の悪夢、爪痕と残る出来事となります。
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