第一幕

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「大変です」 どれだけ急いでも時はお構いなしに経過するという世界。 余談ですが、時を司る神―『クロノス』と時間について語った時は残酷な答えで終わったのを思い出してしまいました… 時間にして間もなくですしタイミングが悪ければパニックになってしまいそうですが… 昼手前の電子音の鐘が鳴る。 死神の宣告に怒鳴られ、涙され、思うように仕事が進まなかった… そして午前があっという間に過ぎていく。 「…今日も残業ですね。次は…」 時計と今日のリストを見ながら歩くと、前方から人…それも速さ的に自転車に乗っている気配が感じた。 「…」 私達『死神』は原則的に現世では見えないように施しています。よって、透明人間のようにもなっておりぶつかってもすり抜けます。物理干渉に至っては私達の任意で干渉することができます。 見えるのは対象者のみ。死という強い力によって形作られるためです。 極稀に感覚の鋭い時期の子供や超能力者に見つけられてしまいますが、その事を現世の人間は皆冗談と思い、笑い話や都市伝説程度に収めてくれるので全く問題はありません。 とはいえ、真正面から走ってくる自転車を自分の身体を通過させるのは些か気持ちが不快になるので道路横に避けます。 そして、横を通り過ぎていく自転車。年齢にして20代半ばでしょうか? 自転車は大きな籠の付いた生活利用の高い自転車ですね。 「…」 しかし、自転車というのはいいですね。今度、案を出してみましょう。 「?」 何か後ろで急ブレーキが鳴りましたが… 今日この辺りでの事故は無いので先を急ぎましょう。
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