第一幕

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「さて…」 目的の家前に着いて表札と住所を確認して一息つく。 時間は…仕方ないですね。事が起こったら臨機応変にいきましょう。 何よりこれから伝える人物は普段とは違う特例…珍しいパターンですから… 「どうも、こんにちは」 「あら、どうも~!」 家の住人…今回の宣告する人物『綾子』が庭の草取りを汗かきながら行っていた。 「今日は暑いですね~ あなたもスーツでおめかしして暑いでしょ?」 「いえ、私はそんなに…」 庭先で会話出来たのは幸先が良いが、それにしても警戒心が薄いような… 「で、格好から見るにセールスかい?」 前言撤回。 「いえ。私、こういう者で…綾子様にお話しがありまして伺いました」 そして、ファーストステップである名刺を渡した。 「『死神 田中』? …まぁ、ココだと暑いから縁側へどうぞ。今、麦茶持ってくるから」 受け取ってくれた。これで一安心です。 案内された縁側は丁度日陰になって涼しく、周りに特に家具や倉庫も無かった。これなら周りを気にせずに済みます。 「いやぁ~旦那が死んでから、人と話す時間が減ってね~こんなのでも話したいんですよ。はい、どうぞ」 「いただきます」 綾子は透明グラスに入った麦茶と1口サイズにカットした西瓜を渡してきた。 今日の多忙と快晴の影響で喉はあっという間に麦茶を通り過ぎました。 「ふぅ…」 「この天気で、そんな格好してたら堪らないわよね」 「いえ、これも仕事なので…」 「仕事か…そういえばウチの息子も何か新聞の求人とかチラチラ見てたわね~」 「はぁ…」 「あら、やだ。ご免なさいね。旦那が死んだ年に就職して、最近帰ってきたから嬉しくなっちゃってね。自慢じゃないけど息子は少し変わった力を持っているのよ」 「変わった?」 どこか嬉しいのか綾子は饒舌になっていく。 「予知夢…まぁ死神さんほど驚くことじゃないけどね」 「それは…!」 驚きました。同じ次元の別の位置、時間を第三者視点で見るのは離れ業。
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