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ひやりと銀瑤の背を冷たいものが駆け巡る。
父の言葉は当主の言だ。
父が当主として銀瑤にそれを命じたのであれば、否と言うことは許されない。
「言わないよな?」
「…はい、父上」
うっすらとその口端を吊り上げて念を押してくる父に銀瑤が拒否を示せる道理はない。
銀瑤の手に丁寧に折り畳まられた文を置いて父は無言で妻戸を指差す。
行け、と言うことだ。
「…行って参ります」
父に一礼して立ち上がると暗い顔で銀瑤は部屋から出る。
ふらふらと出ていくその背には大きく行きたくないと書かれていた。
その様子を見ながら父、宿禰の当主 白夜はやれやれと言った風情で嘆息した。
◆◇◆
「――――というわけで俺は暫く出掛けます 入り用の物があればそこの鳳鴇にでも言いつけてください」
「―――え、俺は行っちゃ駄目なの?」
自室に戻り待ちわびたように尻尾に愛を囁きもふり始めたイーグルに冷めた視線を送りつつ、銀瑤は事の次第を説明し客人たるイーグルを暫し一人にしてしまうことを詫びている最中の発言だった。
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