1【歓楽島】

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1【歓楽島】

{1} 北海道の北端、宗谷岬から西へ30キロほど離れた海上に 『歓楽島(かんらくとう)』という、周囲30キロの島が有る。 大きさから言えば、同じ北海道沖の日本海に浮かぶ島、天売島(てうりとう)より少し広い面積である。 歓楽島の人口は、約300人。 島全体が『歓楽村』という一つの『村』になっていて、島民のほとんどが漁業で生計を立てている。 また、小さな病院、小中学校なども備わっており、神社も有る。 と、言っても島民が住んでいるのは島の東側半分の地域で、 もう一方の西側半分は誰も住んでいない無人の地域だ。 (無人の地域も歓楽村の所有地である) 一般的に島民は、 『西側』『東側』と呼んで二つの地域を区別している。 『西側』の海岸沿いは海鳥の飛来地である事が確認されているが、残りはただ雑草が生い茂る土地である。 風景としては、雄大な自然が満喫できるが、島の『観光資源』には到っていないと言う。 『歓楽島』という名前の由来は、 江戸時代後期に島でマグロが大量に捕れ、島全体が大変な『漁業景気』に沸き返ったと言う。 そこで、 島に飲み屋、遊郭などが次々と建てられ、島の漁師達が大いに遊び歩いたという所から『歓楽島』という名前が付いたと言う。 しかし、 徐々に漁獲量も減少し、 島は急速に『さびれて』いき、今の様な『辺境の島』になったと言われている。 ちなみに現在はホッケやニシン、コンブが捕れ、 夏はウニ漁、秋はタコ漁が盛んである。 なお、 どういった理由かは今もって不明だが、 この島は昔から元々の北海道の先住民、アイヌの人々は住んでおらず、本州に住む『和人』が住み着いており、 現在の島民のほとんどが、その子孫であると言われている。
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