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ショッピングセンターの店内は、再び人混みが増えつつあった。
恐らく、イベント広場の『マグロの解体ショー』が終わって戻って来たのだろう。
「ねえ。頼子。
頼子を連れて来てくれたお巡りさんって、どんな人だった?」
マリ子は頼子に聞いてみた。
「う~ん。
あ!片方のオメメにガンタイをしたオジチャンだったよ」
「片方のオメメ(片方の目)にガンタイ(眼帯)…?
それって、どっちのオメメだった?」
「えっと…確か、左だったかな…」
左目に眼帯…?
と…そこで、マリ子はハッ!とした。
目黒明の『身体的特徴』を思い出したのだ。
「あの人…確か、左目の瞳が緑色…」
目黒の右の瞳は、濃い茶色だが…
左の瞳は、濃い緑色…。
スナックにお客として来ている時は、あの人…
目の事は気にしていない様子で眼帯なんかしていなかったけど…
やはり、仕事中は見栄えを気にして眼帯をして隠してるのかも…。
その時、マリ子の『勘』が急速に働いた。
「きっとそうだわ!頼子を迷子センターに連れて来てくれた警備員は、目黒さんよ!」
今日、マリ子が眠いのをガマンして、このショッピングセンターに来た一番の目的は、
警備員としてこのショッピングセンターで働いている目黒への『陣中見舞』。
そして、さっきまで目黒と一緒だった頼子なら彼が仕事で立っていた場所も、きっと覚えているはず!
よし!
「ねえ。頼子。
頼子を連れて来たお巡りさんがいた場所って分かるよね?」
「え?オジチャンがいた場所?うん。分かるよぉ」
「そこにママも連れて行ってくれないかな?そのお巡りさんにお礼言いたいの」
「分かったぁ。こっちだよ」
と、頼子は店内をスタスタと歩きだした。
マリ子も小走りで頼子の後を追った。
「でも、頼子。
そのお巡りさんに『オジチャン』は、ちょっとかわいそうよ。せめて『オニイサン』って言ってあげなきゃ」
マリ子は笑いながら言った。
「え?オジチャンで良いと思うけどな」
まあ…7歳の頼子から見れば、三十代そこそこの目黒青年も『オニイサン』ではなく『オジチャン』になるんだろうが…。
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