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「……………は?」
マリ子は一瞬、年配警備員が言っている言葉の意味をよく理解できなかった。
「ほら。この通り」
と、年配警備員は自分の右胸に付いているネームプレートをマリ子に見せた。
確かに、そのネームプレートには『目黒』と漢字二文字が刻まれていた。
「いえ。そうではなく…『別の目黒さん』…」
「うん。まあ、今日は複数の警備会社がここで警備をしていますから、
他の会社に私と同じ名前の警備員がいるかもしれませんけどね」
「『ルーク警備保障』の目黒さんなんですが…」
「え?『ルーク警備保障』の目黒なら、この私一人しかいませんよ」
「そ、そうですか…。
たぶん、私の勘違いですね…。すいませんでした」
マリ子は、再び深々と頭を下げると頼子の手を引いて歩きだした。
「オジチャン、バイバ~イ」
「うん。またね。お嬢ちゃん」
マリ子は、頼子の手を引いて店内を歩きながら、
キツネにつままれた様な気分になった。
一体…どういう事?
いつも私のお店に来てくれてた、あの目黒さんは…
一体、どこに行ったの?
マリ子は、もう何が何だか訳が分からなくなった。
と…
「ねぇ、ママぁ。
さっきのマグロの解体ショー、もう一回行ってみようよぉ。さっきより空いてるかもしれないよぉ」
頼子が袖を引っ張り始めた。
「あ…そう…ね…。行ってみようか……」
マリ子は生返事をしながら、再びさっきのイベント広場へと足を向けた。
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