8【陣中見舞】

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「……………は?」 マリ子は一瞬、年配警備員が言っている言葉の意味をよく理解できなかった。 「ほら。この通り」 と、年配警備員は自分の右胸に付いているネームプレートをマリ子に見せた。 確かに、そのネームプレートには『目黒』と漢字二文字が刻まれていた。 「いえ。そうではなく…『別の目黒さん』…」 「うん。まあ、今日は複数の警備会社がここで警備をしていますから、 他の会社に私と同じ名前の警備員がいるかもしれませんけどね」 「『ルーク警備保障』の目黒さんなんですが…」 「え?『ルーク警備保障』の目黒なら、この私一人しかいませんよ」 「そ、そうですか…。 たぶん、私の勘違いですね…。すいませんでした」 マリ子は、再び深々と頭を下げると頼子の手を引いて歩きだした。 「オジチャン、バイバ~イ」 「うん。またね。お嬢ちゃん」 マリ子は、頼子の手を引いて店内を歩きながら、 キツネにつままれた様な気分になった。 一体…どういう事? いつも私のお店に来てくれてた、あの目黒さんは… 一体、どこに行ったの? マリ子は、もう何が何だか訳が分からなくなった。 と… 「ねぇ、ママぁ。 さっきのマグロの解体ショー、もう一回行ってみようよぉ。さっきより空いてるかもしれないよぉ」 頼子が袖を引っ張り始めた。 「あ…そう…ね…。行ってみようか……」 マリ子は生返事をしながら、再びさっきのイベント広場へと足を向けた。
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