9【警備員】

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9【警備員】

{1} その二人の警備員は、 目の前に並んだ保安監視用のモニター画面を椅子に座ってじっと見詰めていた。 ここは、『ルーク・ショッピングセンター歓楽店』の警備保安室。 おびただしい数のモニター画面には、店内のあちこちの様子が映し出されていた。 どの売り場もオープン当日という事も有ってか、なかなかの盛況ぶりだ。 無論、その要所要所に立って警備業務にあたっている警備員の姿もモニター画面に映し出されていた。 それらの画面を見詰めている二人の警備員のうち、吉永(よしなが)という若い警備員は、 特にその画面の中でも左目に眼帯をした年配の警備員の姿をじっと凝視していた。 その眼帯の警備員は、周囲の客達に対して終始、満面の笑顔でニコニコと会釈をしていた。 吉永は『ルーク警備保障』に入社してから約一年になる。 その彼と同期入社した人物の中に 目黒明という青年がいた。 新人研修の時、年齢もそう変わらない彼らは、すぐに意気投合して仲良くなった。 やがて研修も無事終了し、二人はそれぞれ別々の現場へと配属となり、それから会う事も無くなったのだが… それでも時々、メールのやり取りだけは今でもしていた。 それが… 今から一ヶ月ほど前… その目黒からこんなメールが来たのだ。 『今度、ルーク・ショッピングセンター歓楽店に配属になった』と…。 そして… 偶然にも、吉永も同じショッピングセンターの『プレ・オープン当日』の『増員警備員』として、 ここに配属が決まったのだった。 「よぉし!久々に目黒のヤツの顔が見れるな! アイツ…元気してるかな…」 と、旧友との再会を喜んだ吉永だったが… いざ、ショッピングセンターに来てみると… 確かに『目黒』という名前の警備員は、いたのだが… あの目黒明青年とは、全くの別人… 眼帯をした年配の警備員だったのだ…。 「あの…ヤツからのメールは…… 一体、何だったんだ?」
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