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「わぁ!広いなぁ!」
頼子はステージの上から広場の景色を見渡して感嘆の声を上げた。
ステージ上からは、広々としたイベント広場の様子が一望できた。
「…それにしても…」
と、マリ子はステージからの風景を眺めながら、ぼんやりと考えた。
「いつもお店に来てくれていた、あの目黒さんは…
一体、どこに消えたのだろう…」
確かに、このショッピングセンターには『目黒という名前の警備員』は、いた…。
しかし、自分が知っている『あの目黒青年』とは、全くの別人だった…。
これは、一体…
どういう事なのだろうか……。
と、その時。
「わぁ!キレイ!」
と、頼子がその場にしゃがみ込んでステージの床から何かを拾い上げた。
「ちょっ…頼子。あんた、何拾ってるのよ!
何でもかんでも落ちてる物拾ったらダメじゃないの」
「えーっ?だってキレイなんだもん!」
その様子に気付いた清掃員の中年女性が
「あ、ゴミかい?もらいますよ」
と、大きなビニール袋を持って来た。
「えーっ!これ捨てちゃうのぉ?こんなにキレイなのに…」
と、頼子はジャンケンの『グー』にした状態の右手をマリ子の目の前にぐいっと突き出し、
そこでパッと開いて見せた。
「ほら。ママ。キレイでしょ」
そこには、先程の解体ショーの時に床に落ちたのだろうか、
マグロの目玉らしき眼球が一個ちょこんと乗って
マリ子の顔をじっと見ていた。
その眼球の瞳は…
『濃い緑色』
をしていた………。
その瞬間、
マリ子の頭の中に
とても『悪趣味』な『言葉遊び』が浮かんだ。
『マグロ』の解体ショー…。
『目黒(メグロ)』の
解体ショー………。
マリ子は…
あまりにも…
『おぞましい光景』が頭に浮かび…
その場で、
気を失った。
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