13【研究者】

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「それで歓楽島の歴史について知りたいんじゃったよな?若社長」 小田老人は、ちゃぶ台の上に広げてある新聞を片付けながら口を開いた。 「はい。そうです。 でも、その若社長というのは、やめて下さいよ。何となく照れ臭いです」 浩太郎は頭をかきながら笑った。 「いや、若社長は若社長だろ。 アンタ、的場秀一郎の義理の息子で、今は後を継いで社長やっとるじゃろ?電話でそう言ってたじゃないか」 「ええ…。まあ、そうですけど…」 先日の電話で、浩太郎が自分は秀一郎の養子である事を伝えると、小田老人は秀一郎とは面識が有るのだと言う。 「ワシが島にいた頃、秀一郎は、まだまだハナタレのガキでの。 アンタを『的場さん』と呼ぶと秀一郎に話し掛けてる様で、何となく照れ臭いんじゃ。 だから『若社長』でカンベンしてくれや」 「は、はい…。分かりました」 「さて。それで島の歴史に関する事なんじゃが…」 と、小田老人は再び立ち上がった。 「いきなりで悪いんじゃが、どうも最近、長い時間話すと疲れてしもうてな。 それで、自分なりに紙にまとめてみたんで、まずはそれを読んで欲しいんじゃよ」 と、戸棚の引き出しを開けて何やら紙の束を取り出すと、浩太郎に手渡した。 「あ、はい…」 浩太郎がそれを受け取り、見てみると それはA4サイズの白い紙が十数枚ほど束ねてあり、左上をホチキスで止めてあった。 表紙らしき一枚めの真ん中辺りに『歓楽島の歴史』と、ボールペンの手書き文字が記してあった。 「ワシは、隣の部屋でちょっと調べ物しとるんで読み終わったら声をかけてくれんかの。 あと、冷蔵庫に麦茶が有るんで勝手に飲んで構わんから。トイレは玄関の横に有るから使ってくれ」 「はい…。分かりました」 「じゃあ」 と、小田老人は居間の隣室へと行ってしまった。 一人、居間に残った浩太郎は早速、小田老人が書き記した書面に目を通し始めた。
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