不幸な好都合

2/3
前へ
/32ページ
次へ
 父は電器店の販売部にいたが、業績不振による人員削減という理由で、解雇処分となった。  高校生の息子を持つ父の年齢を考えると、再就職も難しい。  父の昔の友人の経営している飲食店に、なんとか働かせてもらえることになったが、住んでいるマンションを手放さないと、遠くて通えない。  父の勤務先を優先し、近くのアパートへと引っ越した。高校も、比較的近いところにある私立へと、転校した。  家にあったピアノも、当然売り払った。  両親には悪いが、オレにとっては好都合だった。  すべてを忘れて、一からやり直せる。  ある意味、天の助けだったのかもしれない。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加